2013/03/25

尖った香りに惹かれるときは

(店長)
長年香水を使っていると、「普通」の香水では物足りなくなると聞きます。
この「普通」の定義は難しいのですが、香水を使っている人の「香りの好み」の最大公約数を満たす香り、とでもいいましょうか。
誰の好みにも何となく受け入れられる香り、どんなシーンでも違和感なく使える香り。
日本社会においては、周囲に溶け込むことの大切さを重んじ、個々の存在を浮かび上がらせることを躊躇させる「日本的社会秩序」が今も健在です。
だからどこか「香水臭い!」と言われないための、無難な香りを探しがちなことも原因といえます。

日本人は味覚が発達していて、受け入れる味の範囲はかなり広いものですが、こと香りの好みに関しては非常に狭いと感じています。
その好みに受け入れられる香りというのは、やはり「どこかで嗅いだような香り」に偏りがちで、斬新さや先鋭的な香りは敬遠されてしまうのです。

でも香水を日常的に使い続けていくと、好みの香りがだんだんと変化してきます。
簡単に言うと「人とかぶらない香り」が欲しくなります。
最初は「香水は自分が心地よくなるためにつけるもの」だったのが、いつしか「香水は自分の存在をより顕在化・アピールするためのもの」に変化するためです。

私も香水を使い始めた頃につけていた香水は、ほとんど好まなくなりました。
その香りが物足りないのです。
そして新たに発売される香水の中から、より自分らしさをアピールできる香りを探すのが、ますます難しくなってきています。

そんな今、少し注目しているブランドが「イストワール・ド・パルファム」
すでにファッション雑誌にも紹介されているので、ご存知の方もいると思います。
香水のコンセプトが先鋭的なので、ぜひこの香水を嗅いでみたい、と思ってしまい、先日先生が大阪出張に出かけたときに大阪のデパートでこの香水をムエットにつけてきてほしい、と頼みました。
そして見つけたのが、あるセレクトショップ。
香水は他のファッション雑貨の陳列棚の中に、数本置いてあるだけだったそうです。


あまり香水を知らないフリをして、店員さんにどんな香水なのか質問したそうですが、素人芝居がヘタだったのか、店員さんが正直よく知らなかったのか、あまり香りの話ははずまなかったらしく、おまけにムエットも置いてなかったので店員さんの名刺に香水を吹き付けてもらい、持ち帰ってくれました。

香りを嗅いだところ、想像通りでした。
この尖った香り。
誰にでも受け入れられる香りではなく、嗅いだ瞬間にこの香りのコンセプトと自分の感性・インスピレーションがピシッと一致しないと、その価値が理解できない香り。
3種類のうち2種類は、自分の好みとしてあまりピンときませんでしたが、1種類は「これならつけてみてもいい」と思わせる香りでした。
最近どちらかというとやわらかい香りをつけていたので、少し鋭い香りを欲しがっていたのかもしれません。
すれ違った人に「ん、なんだろう、この香り・・・」と思わせる香り。
そんな香水がほしい、という思いが日に日に強くなっています。